INTERVIEW Vol.05
中村 綾緒 / Ayao NAKAMURA


interview Kohei OYAMA

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個展開催おめでとうございます。まず、作品のことを伺う前に約4年間続けられたアトリエ兼ギャラリー[1号室|2号室](神田神保町に2006年2月から2009年12月までオープン。現在はオルタナティブスペース「路地と人」)について伺いたいと思います。アーティストでありながら個人で作品発表の場を持つということは稀なことだと思いますが、始められた経緯や辞めた理由について教えて下さい。

中村(以下N)  [1号室|2号室]の前は、photographers' galleryの共同での運営に参加したり、その後1年くらいはネットだけで毎日作品を発表していた時期もありました。それからいざ空間を使って発表したいっていうときに、どこかのギャラリーにお金を出して借りてやりたいとは思わなくて。「大草原の小さな家」のような、自分で全部作ったりする生活の話が昔から好きで、改装とかして空間をコントロールしたり時間と手間を掛けて、そういう場所に身を置きながら自然に出てくるものを見てみたいという気持ちがありました。展覧会の会期とか時間などがみんな一律に決まったようにやっているのが不思議で、[1号室|2号室]では、自分一人で好きに運営していたので、展示内容によって日没から投影作品上映しますとか、そういうことを実際にやってました。自分の生理に従って、衝動のままに撮影している様に、展示空間や、やり方も感覚に近いものがやりたかったんです。ただ、当時は必要に迫られてやっていただけで、時間が経って言葉にできるようになりましたね。
空間や活動に興味を持ってくれた方には、特に線引きせず、他の人にもスペースを貸したりもしていたので、そこが大変になってきたというのはあります。借りてくれる人には自分で管理して、その期間は運営と集客もやってくださいと伝えるんだけど、そこまで無関心にも無責任にもできないところが性格的にありました。何か起きたら行かないといけないし、オープニングパーティがあったら行くようにしたり。お客さんが来ないとか、たくさん来たとか、そういう話を聞くだけでも気になるし。あとは他で展示のお誘いがかかるようになって来た時に、そこでやるのはいいんだけど、自分の場所は空いてて家賃だけ払うとか、自分の場所があるのに他だけでやってるってどうなんだろうとか、うまくバランスがとれなくなってきて。結局ギャラリストになりたいわけじゃないから、運営の業務が増えてくるとちょっと違うかなと。4年くらいやってて人も少しずつ来てくれるようになって、ギャラリーとしても軌道に乗りそうだったんだけど、やはり、個人の生活と制作への時間に、自分のエネルギーを一番そそぎたいと思うようになってきました。 


やってよかったと思うのはどのようなことですか?
 
N 広報や場所の宣伝、掃除から何から全てを自分でやらなきゃいけないから、心構えがしっかりできたっていうのはあります。ちゃんとこれでやるぞという気持ちになる。自分の家を持つようなものだから、いつもどこでやってるかわからないっていうより、ここでやってますよって言うと人も来やすいし、知ってもらいやすい。自分の作品より場所の方が知られてたりすると、嬉しい反面、ちょっと違うなって思ったりもしましたね。

 
場所をクローズした後はグループ展などでひっきりなしのスケジュールですよね。
 
N 場所を閉めた途端、どこもやれるところがなくなっちゃったら嫌だなと思ってたらちょうど色々話があって。それまでは自分の場所があったから、ここで何かやらなきゃと気持ち的に縛られていた部分もあるんだけど、最近は誘われたものはほとんど引き受けています。以前は自分でいい場所を作ってそこでやってたら人が自然に来ると思っていて、それなりには来てくれたんだけど、それだけだと見てもらえる人に限りがある。飛び出して行かないとだめだと思って一区切り入れたっていうか。[1号室|2号室]はオープンにやってたけど半分引きこもっていたようなものなので、それだけじゃ足りなくなってきた。これからまた違った形でやるかもしれないけど、今は別の動き方をしたいと思っています。

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2011年のご自身の活動で印象的だったことは何ですか?

N 3331 Arts Chiyodaでの「Tokyo Art Book Fair」は一人でブースを出したんですけど、お客さんと直に接することで、農家の人が自分の作った野菜をお客さんに売って食べてもらうような醍醐味が味わえておもしろかったです。paraperaのCASHIでのイベント(2011年8月に行われた「LIVE! LIVE! LIVE!」)と、武蔵野美術大学の特別授業で行った撮影もライブシューティングだったので、苦手だからほんとは避けたいところなんだけど、でも今は逆にそういうのものに飛び込んで行こうって思って、それでまたちょっと違う作品が生まれました。それまでは人をモデルに使って撮影することは殆どしてこなかったし、自分の内的な世界を深く見せていく感じだったので、他者が介入することで更に世界を開いていく感じがあります。

次の個展会場(UP FIELD GALLERY)は2つ部屋があって、片方では2台のプロジェクターを使って、水のシリーズと新作の『pray』を投影する予定です。もう片方の部屋では写真を展示します。

 
写真と映写の使い分け、違いについてはどう考えていますか?

N あまり境目はないですね。私はカメラっていう短い時間を切り取るのに特化した機械を使いつつも、常に動きながら撮ったりしてるから、ブレていたり動いている感じの写真が多くて、それをまた編集して動かすと滑らかではない変な感じになる。多くの人の写真が何か起きてる瞬間をばっと撮ってる感じがするんだけど、私の場合だと何か物事が起きてるところを網をふわっと掛けてゆるく捕まえてきたものをどう?って見せている感じで、それを動かすとまた違う時間の幅が出来て、そこに面白さを感じています。

 
写真にしても映写にしても、時間を作るということが重要な気がしますね。

N そうですね。1つは、物語を作りたいのだと思います。小さい頃とか絵本作家になりたかったから。小学生の3,4年くらいのとき、絵本を描きながら自分は天才かも!?と嬉々として描いていたのを覚えています(笑)

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新作の『pray』はこれまでの水と夜景のシリーズが融合したような印象ですね。

N 水なんだけど光の玉に見えるっていうか、水しぶきを浴びてるような、光を浴びてるような感じが気に入っています。実際には光を出して当ててるんですけどね。


中村さんのようなスタイルの場合、制作のプロセスの中で同じようなイメージがたくさん出来上がるわけじゃないですか。そこからどういう基準で選んだり、編集するのですか?

N 最初はもう何も考えないで、ぐっとくるものを選び出して、並べて、またそれを組み替えたり捲ってみたりスライドで見たりして、時間軸上にあるうねりを出すように工夫しています。2枚の組み合わせで動きを出したり。どれも暗い光から始まって、最後は明るい光や希望的なもので終わるか、逆に明るい光から始まって闇で終わるみたいなものが多いけど、途中にうねりがあったり、同じような小さな時間の物語を並べてシャッフルしたり。

 
光の物語のような、光でドラマを作っていくっていう感じでしょうか。

N そう。新作に関しては、シャーマンの踊りに近いような感じがして、祈りのイメージを感じています。それが去年、今年と割とみんなも感じたり願ったりしている感覚に近いんじゃないかなと思っていて。また、いろんな状況の中、それでも希望があるものが見たいっていう気持ちが個人的に強くあります。


曖昧で似たイメージが多くなると、自分だったらはっきりしたものを撮りたくなる欲求が出てきそうな気がするんですが。

N それはないですね。かっちり物が見えてるっていうほうがあり得ないっていう感じがするんです。世界の在り方が流動的で留まらなくて掴みどころがなくて、、とこういう感じで、もやもやとしつつも時々ピンが合って見えるっていう感じ。ばっちりピンが合ってるものばかりの撮り方の人の方がどうしてそうなんだろうと感じますね。学生時代から滲むもの、透けるものとか、アクリルや樹脂で固めたり、そういう作品を作ってたので資質はすでにあったと思います。
あとはカメラの機能としてすごい近づいたらボケるとか、動いてたらさーっと流れちゃうとかそういう面もあるわけで、マイナスと思われている面かもしれませんが、別にそこを活かしたっていいんじゃないか、というのもあります。

 
過去に受けられたインタビュー(web写真界隈)で「終わらない感じが好きだ」と仰っていたのが印象的だったんですけど、今でもそういう趣向はありますか?

N そういう宗教観の様なものがあります。輪廻じゃないけど。言い切らない感じとか。作品毎に一応くぎりはつけるんですけどね。

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中村さんにとって祈りってどういうものですか?

N 私にとっては制作して見せることですかね。何か祈祷したりするわけじゃないので、そうやっている姿勢を見せることが私の祈り方のようなものなのではないでしょうか。誰かが普通に毎日生活してたりとか、そういうのをただ見掛けるだけでほっとするっていうこととか、あるじゃないですか。そういうことの様に、公の事として成り立っているといいなと思います。発表することはプライベートじゃなくオープンにやっていることですから。

 
中村さんの意欲的な活動の背景にどのようなものがあるのか、何に突き動かされているのかっていうことに興味があったんです。

N 普段の生活の中で物事を言ったりやったりすることで完全燃焼できているのであればこういうことをやる必要はないんですけど、やっぱりしゃべったりするのが得意じゃないから、こういうまわりくどいことをしないと普段感じていることをうまく言えないっていうのはありますね。よっぽど色んなことを色んな言い方で伝えたい人なんですよ(笑)

Jan.2012

「ひかりのみず」展
2012年2月9日(木)〜2月19日(日)
12〜19時 (最終日は17時まで)
期間中無休/入場無料

UP FIELD GALLERY
東京都千代田区三崎町3-10-5第三原島ビル304


中村 綾緒

写真家

埼玉県熊谷生まれ、宮城県仙台育ち
東京造形大学造形学部デザイン学科II類織専攻卒業 同大学研究生修了
現在、東京在住

1997年より写真を始める
2001-2004年 「photographers' gallery」に参加、作品発表を行う
2004年よりwebで作品を随時発表
2006-2009年 神保町にアトリエ兼ギャラリー[1号室|2号室]を立ち上げ、一人で運営と作品発表を4年間行う
2009年 写真集『night I,II,III』を3冊同時発売
2011年 写真集『Water』『魔法』発売
2012年 写真集『pray』発売

現在は写真や映像を使った空間表現、ウェブサイト、写真集などで作品を発表。
個展、グループ展多数。

ウェブサイト http://www.nakamuraayao.com/