INTERVIEW Vol.06
村上 友重 / Tomoe MURAKAMI


interview / 大山 光平 Kohei OYAMA

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"fog on the surface of the mountain_03"


2010年にTHE ART OF PHOTOGRAPHY SHOWの1st Place Award 、2012年にはオランダの写真雑誌FOAM MAGAZINEによるFoam Talentを受賞、また展覧会においてもUnseen Photo Festival (オランダ)、CONTEMPLATION (アメリカ)に参加するなど、近年国内外で活動が目立つ村上友重。大学時代に作品制作を始め、会社勤務を経た後、アーティストとしての活動を本格的に始動させて現在に至る。自身の作品に対する考え方や、国外での評価、写真というメディアへのこだわりなどについて聞いた。


村上さんの作品は一見してミニマルな印象を受けますね。

ミニマリストか、とよく言われます。自分としてはそういう気はないんですけど、イメージをなるべくシンプルにしたくて、具体的なものよりも抽象的なものが好きな傾向はあると思います。写真を始めた頃は人の顔が正面から撮れなかったし、記号的なものは排除したいというか、なるべく具体的でないもののほうに惹かれました。


作品の受け取られ方について、日本と国外では反応が違ったりしますか?

国外では自分で意図していなかった部分を見てくれたりはしますね。私は曖昧な風景だと思った1枚の作品について、あるアメリカ人に「全然曖昧じゃない。霧があるじゃないか」と言われたことがあります。私は霧によって隠されたその先が見たいというモチベーションでやっている、という話をしたときに、そのひとはもちろん納得はしてくれたけど、「写っている霧そのものを見るから、そういう思考にはなかなかならない。とても具体的な作品だ」というような話をしていました。その人の持っている言葉の違いで見えているものまで変わってくるというのは分かってはいたけれど、そういう風に私の作品を読み解いて見てくれているというのは、新鮮な発見でした。文化の違いというのは、改めて面白いものだし、それで受け入れてもらえるのであればそれは作品の強みでもあると思います。


写真を抽象的で曖昧なものだと捉えていないのかもしれないですね。

そうですね、そういう中で真っ白な写真とか出すと多少びっくりするんですかね。


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"fog on the surface of the mountain_01"

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"hazy sea, boat"

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"on the mountain_02"


作品はフィルムと印画紙で作っていますね。そこのこだわりについて教えてください。

最近は印画紙の質も変わっているから思うような色が出せません。インクジェットに替えてもいいのかなと思うけれど、単純にイメージだけ転嫁すればいいのかっていう疑問がつねにあります。つまり、印画紙とインクジェットでは「銀塩が化学反応を起こして内側から発光するもの」と「紙の上にインクを塗布するもの」という、メディウムの性質がそもそも違う。そういった中で、私は印画紙の内側の銀が発光して変化していくところに興味があったから、イメージを作りたいからといって簡単にそのメディアを移し替えるということに抵抗というか違和感を感じてしまうのです。

最近サイアノプリント(日光写真)で作品を作っています。このサイアノで大きなプリントを制作しようと思うと、実はインクジェットプリンタがなくてはならないものなのですが、サイズも大きいし、今は実験中ということもあって色々試行錯誤しています。外で制作していたりするのですが、横でおじさんが珍しいものを見るような目で見てきます ()。そういう最先端の技術とすごくアナログな方法とを持ち合わせている写真がとても面白いと思います。テクノロジーの産物でもあり、だからこそ、時間が経てば、それらが古くなっていくという。

写真は光の蓄積とか堆積であるという面がある。サイアノというのは、太陽光(紫外線)を当てることでイメージが出てくる。それが一番原始的で面白いと思います。写真の原理というか。そういうことをしながら写真というメディアは、そもそも何であったかや、光と写真の関係などを考えながら制作を行っています。


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"この、私の何処かに" 2012年 (試作)


ステートメントで書いている「見えないものへの欲望」という言葉の背景にはどういった気持ちがあるのでしょうか。

見えない、見たこともないから見たい、知りたいと思う、単純にそれだけですね。見に行ったり求めていった先でカメラで記録をしていたということです。大学生のときに、色々旅行してたんですけど、それは結局、見たこともないものを見てみたいという衝動から起きたことで、それは今もなんら変わっていません。視覚欲みたいなものが強いんだと思います。それを作品にするときも、ちゃんと手触りを確かめてからイメージ化するようにしています。


これまでのご自身の仕事で一番納得していることは?

2010年のcashiの個展は、今この場でできることをやったという感じはありました。2004年のNikonの展示もそうでしたが、空間を自分なりに使いきった感じがありました。

その時は、作品を平置きにしたりもしたのですが、まずすごく大きくしたいと考えていて、それ以外にも、紙の存在感、重力による重さ、質量を感じられないかと思い平置きにしました。あと、別の作品で円形で星が写っている作品があるのですが、それは私の身長と同じ長さで、フレームに角があることに違和感があって角を落としたんです。それをなくすことで向き合ったときのイメージの広がりを意識して作りました。そういうふうに、写真の形とか大きさのことをよく考えます。もちろん、とても完成とは言えないけれど、私にとってひとつひとつの作品がそうしたことを考える場として大きな機会になっていると思います。

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会場風景 "それらすべてを光の粒子と仮定してみる" 2010年


このときのイメージとマテリアルの扱い方は、強いて言えば写真とアートの微妙な狭間にいる感じがあって、それがすごく無理してない感じで気持ちよかったです。

私より5才くらい下からだいぶ写真に対する意識が違うと思うんです。紙のひとつとして、あるいはイメージのひとつとして、それらを切り離してできることをやってたり。

私の年代くらいってちょっと違うと思うんですよね。もうちょっと上の銀塩世代にひっぱられてるところがあるし、かといって下の世代がやってることを意識しすぎると無理がある感じがしたり。その中間の煮え切らない、いい意味での写真という文化だったり印画紙のよさだったりを残っている世代だと思っています。やっぱり銀塩しか表現出来ない、ノイズも多いけど、だからこそ豊かな階調の写真もすごくいいと思うし、かといってそこにしがみついていても、なくなってしまうものは出来なくなるし、それを壊していかないといけないんだろうなという気持ちもあって。今の大学生くらいの軽やかなメディアの使い方も羨ましいですが、なんとなくそこにいけない、というところで葛藤しています(笑)。


昨年掲載されたFOAM Magazineと、参加されたUnseen Photo Festivalについて教えてください。

FOAMで今回選ばれたアーティストは女の子が多かったです、びっくりしたんですけど。UNSEENに来てる子たちとは会って話しました。下の世代になるとやはり考え方が違っておもしろかったですね。ただ写真を撮るだけではない、そういう流れとはだいぶ変わってきているのを感じます。見る人たちが写真に対して期待する、おもしろがるポイントも少しずつ広がってきてるという気がして、すごくおもしろいですよね。

Unseenもとてもおもしろかったです。写真やアート好きに限らないふつうの人たちが入場料払って来てるんですよね。おじいちゃん、おばあちゃんだったり、家族連れだったりが、散歩のついでに気軽に来てる感じがあって、文化が全然違うなっていうのは肌で感じました。会場も活気がありましたし、あとはスタッフにも活気があるのがよかったですね。

海外というか同じ世代でアーティストとしてどうやって生きていくのかっていうのはみんな大変で、どこも一緒なんだなと思いました。

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会場風景 "Unseen Foam Talent Exhibition" 2012年


音楽はどういうものを聴かれますか?

音楽の好みはわかりやすいですよ。シガーロスとかレディオヘッドとかビョークとか。あとはジャズシンガーなのかな、浜田真理子さんとかも好きです。学生時代はROVOとかも聞いていましたが、レディオヘッド聞きながら芥川を読んでいるような学生でしたから割と混沌としていたかもしれません。でも、最近はほとんど音楽聴かなくなっちゃいました。聞いていてもラジオくらいです。


今後のご予定は?

今年は夏に中之条ビエンナーレで出す予定があります。あとはここ1、2年の間に本が作りたいですね。本はやっぱりひとつの区切り、成果物として残しておきたい気持ちが強くなってきました。あとはサイアノを使って色々やりたいこともあって。もちろん、個展もしたいです。

Apr.2013



村上友重 / Tomoe Murakami

1980年千葉県出身、早稲田大学第一文学部卒業。現在、東京藝術大学美術学部助教、アーティスト。2004年ニコンサロンJuna21「球体の紡ぐ線」第6回三木淳賞受賞 (日本)、2010年"The Art of Photography Show 2010"1st Place Award(アメリカ)、2010年"ALLOTMENT TRAVEL AWARD"アーカイバルアーティスト(日本)、2012年FOAM美術館主催"FOAM TALENT"受賞(オランダ)。2006年Vermont Studio Center(アメリカ)アーティストインレジデンス参加。その他、個展、グループ展多数。

WEBSITE:www.tomoemurakami.com