INTERVIEW Vol.10
佐藤 健寿 / Kenji SATO


interviewed by 大山 光平 / Kohei OYAMA

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ENTOPTICS 05, 2013

2014年1月11日から2月28日までG/P+g3/ Galleryにて開催中の「THE EXPOSED #7」。このショーケースに参加する6名の写真家 / アーティストにインタビューを行う。
第三弾は、2002年からウェブサイト「x51.org」を主宰し、『奇界遺産』をはじめ近年いくつかの書籍をリリースしている佐藤健寿。今回の展示に誘ったのは、フォトグラファー、作家、研究家など多くの肩書きを持つ彼を、アートの文脈に沿って解釈することは可能なのかという試みでもあった。


日本の美大を卒業後、ウェブサイト「x51.org」を運営しながらアメリカに渡り写真を学んでいますね。そこではどのようなことを学びましたか?

僕が学んだ限りですが、アメリカの美大は写真の内容についてのクリティクは結構あっさりしてました。むしろ額装の方法とかプレゼンテーションとか、アートを「商品」として成立させるうえで、甘いところがあると徹底的に減点されました。その辺は日本の美大と対照的ですが、結局アメリカは、アーティストが職業としてある程度成立してるからこそ、そういう授業方針なんだろうと思います。


その後、写真集『奇界遺産』をはじめいくつかの著書を刊行されていますが、一貫して世界中の珍奇な光景や奇習に目を向けられていますね。そういったものが人々を惹きつける理由は何でしょう?

単純に見ていないものを見たい、というのは人間の本能なんだろうと思います。アートであっても珍奇であっても、単に被写体の「傾向」とか「雰囲気」の違いだけで、やってる事もそれを見る側の態度も実はあまり変わらない気がします。


旅先での印象深いエピソードがあれば教えてください。

色々とありすぎてひとつに絞るのは難しいです。ただ、10年以上旅するような生活をしていると、光景は思い出すのにその場所がどこだか分からない事が多々あって、たまにそれが現実だったか想像だったかも分からなくなる事があります。それはなかなか不思議な感覚です。


以前受けられたインタビューで「心霊を調べていくと写真学に通じるんです。歴史的にメディアにも深いつながりがあって、心霊がすごく意識された時期っていうのは、写真の技術が発達した時期とすごく重なっているんです。」*という言葉が印象的でした。根源的な視覚現象と心理への関心が伺えますが、写真の魅力は何だと思いますか?

昔のダゲレオタイプが流行った時代というのは、写真の役割のひとつに死者を映像として現世に留めておくという目的があった。つまり、写真はそれが見られるときには既にその瞬間や人/物、シチュエーションは存在しない事が想定されているわけで、その機能は今日のiPhoneの写真でもデジカメでも変わりません。だから写真は「やがてそこからなくなるもの」とか「今は存在しないもの」という無意識を常に孕んでいると思います。「いま存在しないもの」の存在を代弁するという意味で、すべての写真は心霊写真的とも言えるし、とても純粋な「メディウム(媒介)」なんだという気がしています。


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ENTOPTICS 03, 2013

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THE EXPOSED #7 展示風景 ©Kazuo Yoshida


THE EXPOSED #7出展作品の解説をお願いします。

タイトルのENTOPTICというのは人間の網膜に現れる光像による錯視現象ですが、そうした内視的な光学現象がUFOや幽霊といった超常的なイメージであったり、あるいは神のビジョンといったような形而上的存在を人間が信じるきっかけになったという説があります。今作で集めたのは、そうした原始段階での信仰や驚きと、その先に生まれた廃墟であったりロケットという繋がりで、そこには確かに因果があるはずなんですが、それは何なのか、という自分なりの問いかけになります。


今回のように展示で写真を見せるのと、本で見せるのとでどのような意識の違いがありますか?

率直にいえば、いまは自分の場合、やはり本ありきで展示はあくまでその延長、という感覚が強いです。単純にやりたいことを突き詰める上で、僕の場合は本の方がやりやすい。額装してエディションをつけて少数の人にそれを売る、という方法論に正直、あまり自分自身リアリティがないし、今、国内を見渡したとき、写真を展示販売して食べて行くというのはほぼ現実味がないと思います。もちろん、そういう時代背景からparaperaみたいなメディアも生まれてるんだと思いますが。あるいはギャラリーやパトロンを見つけて、作品を撮っていくという道もあるのかもしれませんが、アートの世界は自由なように見えて、マーケットが狭い上に文脈的拘束力が強いので、狭い範囲で立ち回らないといけなくなる。だったら本のフォーマットで世に問いつつ、きちんと制作費を回収しながら制作を進める方が持続的かつインディペデントに出来るし、より多くの人に見てもらえる可能性があると今は思っています。ただ、一枚の写真が一冊の本を凌ぐ可能性があることは、もちろん全く否定しません。


影響を受けたり、気になっている写真家はいますか?

いま一番面白い写真を撮っているのは、火星の無人探査機のキュリオシティだと思います。あとはニューヨークにバーンズ・コレクションという19世紀に精神病院等で撮影された写真のコレクションがありますが、そういう医学系の記録写真が好きです。


写真集『奇界遺産』の続編が近々刊行されますね。見どころを教えてください。

見どころは、実は最初にチェルノブイリを訪れたんですが、その四ヶ月後に震災が起きました。そういう世情の中で、奇界遺産的なものがどう社会と関わるかを考えながら取材を続けたんですが、それがそのままテーマとなりました。とはいえ、単純にエンターテイメントとして見てもらって全く構わないし、少しでも笑ったり驚いてもらえれば、ありがたいなと思います。

Feb.2014

佐藤健寿

武蔵野美術大学卒。世界各地の辺境・秘境や都市を巡り、自然/珍奇といった博物学的視点、土着文化/美術といった美学的視点をテーマに世界各地を撮影し、様々な媒体でフォトグラファー/作家として活動。写真集『奇界遺産 THE WONDERLAND'S HERITAGE』(エクスナレッジ)、ほか著書に『X51.ORG THE ODYSSEY』(講談社)。 2014年3月に『奇界遺産2』(エクスナレッジ)の刊行を予定。

Website : http://x51.org/kikai/


* http://happism.cyzowoman.com/2013/03/post_2035.html