INTERVIEW Vol.11
小林 健太 / Kenta COBAYASHI

interviewed by 大山 光平 / Kohei OYAMA

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Kenta_Flower, 2014

2014年1月11日から2月28日までG/P+g3/ Galleryにて開催中の「THE EXPOSED #7」。このショーケースに参加する6名の写真家 / アーティストにインタビューを行う。
4回目は小林健太。小林との出会いは、一昨年に写真家の横田大輔と共に行ったZINEのワークショップでのこと。その時から彼の写真に非凡な吸引力を感じ、ブログをチェックしている。プリント、デジタル、ブログ、自撮り、ZINEなど、気になるキーワードをぶつけてみた。


早速ですが、THE EXPOSED #7出展作品の解説をお願いします。

写真は僕たちの生活に浸透し、アメーバのようにその形を変えています。その輪郭を明らかにしたいという気持ちがあります。今回出展した作品は、これまでに撮った写真からその点に絞って見せ方を考えました。使い捨てカメラや、iPhone、スクリーンショットなど、撮影デバイスのバリエーションを持たせることを意識しました。


今回が初のプリント展示となったわけですが、壁に飾ったときの感覚はどうでしたか?

紙という媒体は必ずしもイメージを定着させる際の制限となるものではないと考えていますが、実際に印刷してみると、想像していたよりも美しいと思いました。紙の光沢やインクの粒子はとてもフェティッシュで、適切に用いれば強烈な快楽を与えてくれます。これからもっと研究して、より質の高いプリントを作っていきます。ただ、それがあくまで選択肢のひとつであることは忘れてはいけないことでしょうし、それを忘れないためにブログやZINEがあります。


撮影とデジタル編集というふたつの行為における比重が等しく見えるところに特異性を感じます。一方で、90年代以降のストレートなプライベートフォトの延長線上で作品を見ることもできる。そのバランスについてはどう考えますか?

写真の面白いところは、必ずしも写真家や批評家といった専門家だけがメディアを発達させるわけではないというところです。人々の欲望はどのようにひとつのメディアを創出したのか、創出されたメディアは人々にどのような影響を与え、次の状況を創り出していくのかということに興味があります。だから僕は必ずしも解像度の高い、所謂「良い」カメラだけでなく、iPhoneや使い捨てカメラのような、より一般に普及しているデバイスも等しく用いるのです。そのような方法論を用いるとき、プライベートな風景は被写体として適しているように思います。

デジタル編集に関しては、僕たちの世代ではプリクラに始まって現在はInstagramなど、写真に手を加えることはもはや自然なことだと思っています。例えばプリクラで被写体の目が不自然な程拡大されるなど、過剰な編集も度々行われます。過剰な編集は不気味な印象を与えることもありますが、美しいとも感じます。


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Out, 2014

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Noise, 2014

自身のブログにかなりの頻度で写真/画像をアップロードしていますね。

ブログには撮影や編集をする喜びのまま公開しています。アップロードする直前に考えることはあまりありません。アップロードした後は前後にスクロールしながら次の展開を構想し、どのように動くべきか考えます。サーフィンをしたことはありませんが、波に乗っている気分です。そこで考えたことが身体に馴染んだころに、また新しい写真を作り、アップロードします。その繰り返しです。俯瞰して、あるコンセプトを見つけ出して編集し直すのは、ZINEを作ったり、今回のように展示をするときです。


自撮りを頻繁に行っていますね。selfieという言葉が英オックスフォード辞典で2013年を代表する言葉として選ばれたそうですが、SNS時代のセルフポートレートともいえる自撮りを作品として見せることにどういったこだわりがありますか?

自撮りが流行っているのはとても面白いですし、理屈抜きに共感しています。
重要なのは「インカメラ」だと思います。自分を向いたカメラと自分が映っているモニターを同時に意識しながら撮影するというのは、従来と異なる新しいカメラと被写体の関係なのではないでしょうか。
Photobooth(*1)で撮影した写真だけで『Hello, me.』というZINEを作ったことがあります。Photoboothのおもしろいところは、写真が全部左右反転しているのです。仮に正像でモニターに写したとすると、右手を上げるとこちらから見て左側の手が上がることになるので、ユーザビリティを考慮して左右反転してデザインされているのです。まるで鏡のようですが、この鏡は美しいある一瞬を切り取ることができます。人々は自分の視線の延長線を切り取る装置が出てきたときと同じように、この鏡のような新しい装置に魅了されているのではないでしょうか。「撮れば写る」という写真の根源的な喜びに加えて、演出・編集可能であることの喜びが表れているように思います。


現在渋家 (シブハウス) というシェアハウスで32人の共同生活をしていると聞きます。そういった生活環境が制作に与える影響はありますか?

現在、渋家というプロジェクトはシェアハウスという枠に収まり切らない形態を取っていて、多種多様な能力を持った人々が深く交流を持ち、新しい何かを生み出すような環境として運営されています。
渋家という環境がどのように構想され、実際に組み立てられるのかを見たり、それに参加したりすることは、多くの学びを与えてくれていると思います。環境を設計したり運営したりする能力は、写真家にとっても重要でしょう。特に自分の身の回りを撮る写真家ならば、自分がどのような環境に身を置くべきか、あるいは環境を作るべきか、考えざるを得ません。

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GreenMist, 2014

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Hello,me., 2014

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THE EXPOSED #7 展示風景 ©Kazuo Yoshida


主催されているZINEレーベルMMGGZZNN (メガジン) の紹介をお願いします。

MMGGZZNN(*2)は2013年4月から始まったプロジェクトで、高さ約1.7m、幅約1.2m(ページを広げると2.4m)の巨大なZINEを、世界中の様々なアーティストとコラボレーションして制作するものです。すべてユニークピースで、天井から吊り下げて展示します。彫刻と、インスタレーションと、冊子の間の子のような形態で、安価ですが独特の質感と迫力があります。元々は自分の写真を見せるための方法として制作しましたが、現在ではペインティングや漫画など、様々なコンテンツを扱っています。キュレーションなど運営はBIG-BANG PRESSという4人程のチームで行っています。現在11部発行(制作)しており、アメリカやオランダ、スペインなどのアーティストが参加しています。2013年9月にはTANA Gallerybookshelf協力の下、美学校で展覧会を行いました。


作品を制作するうえで、最も影響を受けた写真以外のものは何ですか?

アニメーション作家のDavid O'ReillyとDon Hertzfeldtです。同じ時期に出会い、夢中になりました。


今後の予定を教えてください。

10月にスイスはバーゼルでCULTURESCAPES(*3)というアートイベントに参加します。
大学の学部であと1年間学べるので、よく勉強したいです。キュレーションをしたり、カメラを作ったりしたいです。展示もいくつかあるかと思います。Twitter(@ekabk)やFacebook(ekabk0misha)、またはメールでニュースの配信等行ってまいりますので、引き続きご支援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
Feb.2014



小林健太 / Kenta Cobayashi
1992 年生まれ。デジタル一眼レフ、フィルムカメラ、iPhone、MacBook の内蔵カメラやスクリーンキャプチャなど、様々なデバイスを使い、身の回りの生活をモチーフに写真を撮影しイメージを制作する。1.7×1.2m の巨大なZine を制作する"MMGGZZNN"プロジェクトを主催。同年代の若者たちで渋谷の一等地に民家を借りるアートプロジェクト「渋家」に参加し、現在32 人で共同生活をしている。



*1 アップル社のソフトウェア。Mac内蔵のiSightで撮影し、複数のエフェクトをかけることができる
*2 MMGGZZNN : http://mmggzznn.com BIG-BANG PRESS http://bigbangpress.net
*3 http://www.culturescapes.ch/tokio_2014