INTERVIEW Vol.12
菊地 良太 / Ryota KIKUCHI

interviewed by 大山 光平 / Kohei OYAMA

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←, 2013

2014年1月11日から2月28日までG/P+g3/ Galleryにて開催中の「THE EXPOSED #7」。このショーケースに参加する6名の写真家 / アーティストにインタビューを行う。
今回は菊地良太。クライミングの経験を活かし、自身の身体を介入させながら都市風景の見え方を刷新する。彼の方法論はどのようにして生まれたのか、スポーツとアートの境界線についてなど、話を聞いた。


電灯やモニュメントなど公共空間にあるものを岩山に見立ててクライミングし、自分の姿を含めて撮る、といった方法論を実践するきっかけはどういったものだったんですか?

フリークライミングは高校の頃から16年以上続けています。今でもクライマーのつもりですが、大学に入ってからあまり登れていないのが現状です。2006年に1ヶ月ほど仲間とテキサスへクライミングに出かけた際に、初めてカメラを買いました。主に記録が目的だったのですが、クライミングをやっていない人と、クライマーの自分が撮る写真では、だいぶ違ったものになるということにそこで気付きました。ただ、岩を登っている写真ではその違いが伝わりにくいということも、家族や友人に写真を見せたときの反応で気付きました。そこで、岩ではなく、電灯やモニュメントなどの公共空間を対象として選ぶことで、その間をつなげることができるのではないかと考えました。


やはり木登りやジャングルジムなどが好きな幼少期だったのでしょうか?

10歳まで大阪の泉北ニュータウンというところに住んでいたのですが、団地の間にある森や公園、コンクリートで覆われた崖でよく遊んでいました。パーカーが木に引っかかり動けなくなって、そのまま10分くらい誰にも気付かれず、てるてる坊主みたいにぶら下がっていたのを覚えています。自然も好きですが、団地に住んでいたこともあり、コンクリートも同じ価値で見ていたのかもしれません。


介入する対象はどのように決めていますか?

クライミングでは誰かが最初に開拓したルートを登り、そのルートを初めて登った人が名前を付け、グレードを付けるのですが、その全ての行為を実際の街でやっているような感覚です。
普段何気なく目にしているもの、当たり前すぎて忘れ去られてしまっているようなものから、形状やラインが綺麗か、その物から鑑賞者は何を思うかといったことを判断します。自分のテリトリー、地図の中でちょっとずつ地元の津田沼を広げている感じです。


THE EXPOSED #7出展作品の解説をお願いします。

建物、橋、パプリックアート、川を覆うブロック、公園、電灯など、当たり前すぎて忘れ去られてしまっているものに対して自ら働きかけ、もう一度よく見直し、そこから見つけた視点や感じたリズム、自然な体の運び、それらを抽出したラインの軌跡、といった気付きを扱ったものです。同じ頭を使うにしても、理屈を考えるのと、脳みそをアンテナにして体からいろんな信号を受け取るのとでは、使い方が違います。

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call out, 2013

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stuck, 2011

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ステルス, 2013

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THE EXPOSED #7 展示風景 ©Kazuo Yoshida


パフォーマンスの記録でもあるし、コンセプチュアル・アートでもあると言えて、路上でのイリーガルな行為である点ではストリートアートでもある。そしてなによりスポーツでもある。多義的な解釈へ開かれていて、ストレートな明快さも持ち合わせていますね。

スポーツが好きで、写真もスポーツだと思っています。パフォーマンスについても環境に大きく依存しているという点で、クライミングやサーフィンとあまり変わりないと思っています。イリーガルな行為である点については初期衝動の熱が冷めないことを大事にした結果、自然とそうなってしまった場合が多く、何かに対してFUCKということではありません。しかし、そこには責任が生まれてくるので、死なないように鍛える、自分の感覚で危ないと思うことはやらない、という自己責任で良いと思っています。駅のホームや岸壁が全部柵で覆われてしまうことのほうが異様に思います。


SIDE CORE(*)で宇和島のプロジェクトに参加していますね。地元から離れた地域で制作する際に取り組み方は変わりますか?

やはり地元ではないので自分の体に馴染むのに時間がかかります。ただ自分の決めたルールに縛られすぎないというメリットも感じています。


「ステルス」シリーズなど、身体を介さない作品も作られていますね。

これは自分がパフォーマンスを行うロケーションを探しているときに、自分が空間に入り込まなくても、それだけで成り立っているものを見つけて収めたものです。道路の標識など本来は注意喚起するような物が、どういった訳か角度が変わってしまい、地面と平行になって見えにくくなっていることがあります。そういった物は本来の意図からかけ離れ、新しい意味が生まれています。物それ自体が持っている隠れた意味を「ステルス」と呼んでいます。


作品を制作するうえで、最も影響を受けた写真以外のものは何ですか?

やはりクライミングですが写真作品でも扱っているので、その他では音楽でしょうか。僕が中学生ぐらいの頃テクノミュージックが流行っていました。その中でもケン・イシイ、ジェフ・ミルズ、デリック・メイなどのミニマルテクノは音の持つ雰囲気などから音楽を読み解き、何かを感じられたという機会だったように思います。


今後の予定を教えてください。

3月のアートフェア東京にSIDECOREで参加します。それから大学院に進むので、あと2年は大学で色々なことをしたいです。どこかでクライミングにも行きたいと思っています。とにかくなにか作り続けていくつもりです。
Feb.2014


菊地良太

1981年千葉県生まれ。クライマーは岩の前で身体を駆使して登るだけではなく、岩の中にある凸凹を見つめ、細かな割れ目やポイントを探しラインを見つけ出す。10 代の頃より行うクライミングの、そういった物の見方や探し方を制作に取り入れ、郊外の見慣れた風景や忘れ去られてしまっているものに対して生まれる新しいラインを探る。東京芸術大学先端芸術表現科在籍。 
主な展示に「AT ART UWAJIMA S ITUATIONALLY」 (2013)、「サイドコア- 身体/ 媒体/ グラフィティ- 」( テアラトリア・2013)、「サイドコア-日本美術と「ストリートの感性」-」( BA-TSU ART GALLERY・2013)など。


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